映画の楽しみ方


登場人物への感情移入だけが映画の楽しみ方ではないよね、というお話。



たとえば去年から流行りに流行った『ジョーカー』。

私にとって、あの映画の面白さは色彩の良さだ。しょうじきなところ、あまりアーサーに感情移入せずに見ていた。


ひときわ美しいシーンがある。

マレーのショーに出る瞬間だ。

柔らかな幕がたなびくなか、色とりどりのスポットライトがあたり、アーサーのジャケットが紫色になる瞬間がある。

過去作に対するリスペクトなのか、その色彩に感動した。


現実なのか妄想なのかわからないアーサーの世界だが、冷たい水色の世界、暖かいオレンジ色の世界がよく映される。その色彩により、妄想と現実を区別しているのかなと、映画を見ながら考察していた。


そして階段の昇降についての考察。

何かから逃げるとき、アーサーは階段を駆け上っていることが多い。反面、階段をゆっくり降りてくる象徴的なあのシーンは、何かから解き放たれたイメージを抱いた。


このへん、去年は友人と話し込んで楽しかった。



イット・フォローズという映画を、昨日、久しぶりに見た。

この映画の面白さは、デトロイトという街を舞台にしているところだと思う。

アメリカンドリームの成れの果て。撮影時は財政破綻した年でもある。アメリカのなかでも治安の悪さが際立つ街。

そんな街を舞台に、陰鬱さをこれでもかと盛り込む新進気鋭の監督と撮影監督が興味深い。イットフォローズは、特に撮影監督の腕がひかる作品だと思っている。

ちなみにアスを手がけているので、そちらと比較する楽しみもある。アスは内容も好きだけど、撮影技術が好き。二回見たくなる映画。


イットフォローズ、誰の視点かわからない不安定なショットが多い。グルグルと、不自然なほどゆっくり回るところが好きだ。

空が映る景色は曇天が多いが、晴れてるときは良くない兆候だとなんとなく感じるのも好き。

『それ』の怖さに焦点をあてるのではなく、住んでいる街に覆う不安感を底上げしているところや、登場人物たちのどこか投げやりでダウナーな雰囲気を100分かけて長続きさせてるところが好きだ。

この起伏が少なめの、ややダラダラしたところは、どこかロードムービー感がある。



映画の楽しみ方は人それぞれ。

映画を見たあと、あれこれ調べるといろんな発見をすることが多い。私は最近だと撮影監督のほうに興味がある。


あとはゴア描写についてあれこれ文句を言うのも好きだ。

臓物の量が足りないとか。皮膚を剥がすシーンの特殊メイクが雑とか。飛び降りるときの撮影編集が甘いとか。

シリーズものだと、回を重ねるごとに予算が増えていくさまを見守るのも好き。


映画好きな人の話をたくさん聞くと、あらゆる角度で楽しみ方が増えるので、ひとまず私は内山昂輝さんのラジオをおすすめしておく。


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