逃避
あまりにもフラッシュバックらしきものがキツいため、昼に睡眠薬などを飲んだ。
本当はしてはいけないことだ。
耐性がついているため、四時間後には覚醒していた。
薬でボーッとしていても、嫌なことを次から次へと思い出す。
あれがフラッシュバックか、と実感を得てから丸一日。重さや軽さの違いがあれど、自分はフラッシュバックをよく体験していたらしい。
今までフラッシュバックとは、その場にいるかのような感覚、だけだと思っていた。
その場にいていた自分を遠くから眺めるのも、ある種のフラッシュバックなのだろう。
猫の死なんて最たるものだ。いまだに思い出す。あの朝日のまぶしさを。痙攣して口から泡をふく猫の姿を。深夜にスーパーへおもむき、段ボール箱をもらいにいったことも。あの寒さも。
感情を大きく揺さぶられる出来事がおきると、つられるように感情の嵐にまきこまれる。
必死に耐えていた。耐えきれずに薬を飲んでしまった。
つらい記憶を何度も何度も何度も再生される。ひとりで耐えるしかない時間がつらい。
そして、理由を誰にも話せない。自分一人で抱えて沈んでゆく。
人を気遣っても報われないのを知っている。無駄なことをしているのを知っている。どんなに好意や厚意を向けても私は捨て置かれるのを知っている。
パンを焼いたからお礼をくださいと言ってはいけないのだ。