人間のフリをしているだけ
幼い頃の記憶はほとんどないけど、一瞬でも気を抜くと死にそうだったのだろう。
両親は自殺が大好きだ。
子供を残して死ねないタイプの自殺好き。
だから私は、その自殺に巻き込まれやすかった。
たぶん幼い頃から。成人してからも巻き込まれやすかった。
よく家族は対立していた。
両親と敵対するかどうかで。
兄弟は基本的人権という言葉を知らずに生きている人たちだったから、両親を病院に一生入院させろと、なぜかいつもわめいていた。
親の介護をしていた私にとっては、頭の痛い問題だった。
彼らが対立して喧嘩をはじめると、私は両親の自殺に巻き込まれるからだ。
彼らはすぐに死にたがる。一人で死ねば良いのに、女の私が残ると可哀想だからといって、いつも私と死にたがった。
両親から自殺に巻き込まれて殺される日常。
そんな日常だったから、つくづく自分は人間として生きるのに向いてないなと思う。
なんとか頑張って生きているが、ふとした瞬間、自分がバケモノなんだと思い出す。
これでもいちおう、将来のことを考えているのだ。
戸籍を変えること、名前を変えること、住む場所を今より遠くにすること。生きるために、色々なことを考えている。
それでも感情の嵐に巻き込まれると、己の命の価値が揺らぐ。
愛している親から私の死を喜ばれた経験のおかげで、なにをどうやっても自分の命に価値を見出せない。生きていることに誇りがもてない。この世界に存在していいと思えない。
人間のフリをするのは疲れる。
ここまで頑張って生きてきた。ほんとはもう休みたい。